逆寅次郎はタナトスを抑えられるか?

映画「火花」は、夢を追い続けたけど諦めた人達全てを救う鎮魂歌

全ての、夢を追い続けて負けた人は見てほしい映画。

これが芥川賞を取る理由もわかる。

又吉直樹の小説はまだ読んだないけど、ラストシーンを見終わった後の、余情っていうか、スッキリとか爽快とかそういうのとは違う、救われたような清々しさみたいなのを感じた。

 

特に最後、主演の桐谷健太が演じる神谷、菅田将暉が演じる徳永の、ダイアローグが素晴らしい。漫才は二人でもできない…のくだり。

 

「この壮大な大会には勝ち負けがある。だからおもろいねん。でもな、淘汰されたやつらの存在って、絶対無駄じゃないねん。まあ”やらんほうがよかった”って思ってるやつもいてるかもしれへんけど。じゃあ、例えば優勝したコンビ以外はやらん方がよかったかっていうと、絶対そんなわけないやん。1組だけしかおらんかったら、絶対そんなおもろくなってないと思うで」「だから1回でも舞台に立ったやつは、絶対、必要やったんや。絶対に、全員必要やったんや」「だからこれからの全ての漫才に俺らは関わってんねん」「つまり何をやってても、芸人に引退はないねん」

 

このセリフのシーン、これは響いた。
自分は芸人目指してたわけじゃないけど、これは夢破れ、火花のように散っていた若者たち全てに届いてほしい言葉でもあるな。

 

吉祥寺と渋谷のシーンが多々ある。
渋谷は「シアターD」っていうお笑いライブの劇場が昔あって、確か500円か1000円だったか、すごい安い金額で何本も若手芸人のライブを観れた。観に行った記憶がある。

そんなに大きい箱ではないし、鑑賞料も安いから、芸人の懐に入る収入は微々たるものだろう。

バイトしてた方が割がいい。

「俺たち東京来てずっと風呂なしのアパートだぞ」

そんなうだつが上がらない日々を、スパークスは10年続けた。

10年続けて、結局、スーツを着てサラリーマンに落ち着いた徳永。

この10年は意味なかったのか?
現実ではそうなのかもしれない。
不動産の仕事をするなら、高卒なら18、大卒なら22歳ぐらいか、そのぐらいから宅建の資格とか取ったり、業界の知識を増やしていった人材の方が給与が高くなるだろうよ。
でも資格とか業務知識以上に、徳永には強みがある。それが神谷の言ったセリフ。

 

「徳永は10年間面白いことを考え続けたわけやん。そんでずっと劇場で人を笑わせてきたわけやろ。」「それってとてつもない特殊能力を身に付けたいうことやで。ボクサーのパンチと一緒やな。あいつら無名でも簡単に人〇せるやろ。芸人も一緒や。ただし芸人のパンチは、殴れば殴るほど人を幸せにできんねん」「だから芸人辞めて、人の仕事でメシ食うようになっても、笑いでどつきまわったれ。お前みたいなパンチ持ってるのどこにもおらんからな」

だよな。これも普通の文脈で言われたら、なんか現実てみてない青臭くて噓臭いセリフになるかもなんだけど、ラストシーンにこれがあるとなんか重みっていうか説得力がある。

芸人として藻掻き続けて、やり続けている神谷と徳永の二人だから「そうだよな」って共感したくなる。

 

神谷が、木村文乃が演じる真樹の住む家に転がり込んでる時、標識が見えた

「東京都練馬区関町東1丁目」って書いてた。

googlemapで調べると、上石神井の近く。

なんかテレビ版の火花だと、このシーンで、徳永が神谷をいじってた気がする。

「最寄り駅が高円寺(吉祥寺?)って言ってるのに、実際は上石神井」みたいな。

 

まあ実際、家賃相場は西武新宿線の方が安いよな、吉祥寺とか高円寺とかより。

あの路線はなんか、自分もよく沿線の駅に降りたことあるけど、高円寺とか吉祥寺よりギラギラしてないし。

静かだし、住むには悪くないんだけど。

でも、失礼だけど、華はないのかもしれない。

芸人として、生きるなら、吉祥寺や渋谷の華やかな喧噪の中で過ごしたい。

皆のいる所で天下取りたい、みたいな気持ちになるのかな。

 

とにかくいい映画だった。

終盤の菅田将暉と川谷修士の漫才もいい。

てか菅田将暉の演技、ほんと引き込まれるな。

 

最後、テロップで出てきた劇中使用映像「いなべ」「税金サイボーグ・イトマン」「飛龍炎昇」「殿~しんがり」も何か気になった。また調べよう。

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管理人:逆寅次郎
東京在住のアラフォーのおっさん。大学卒業後、出版業界とIT業界で、頑張ってサラリーマンを15年続けるも、他律的業務と人間関係のストレスでドロップアウト。日銭を稼ぎながらFIREを夢見る怠惰な人間。家に帰っても家族もおらず独り、定職にも就かずにプラプラしてるので「寅さんみたいだな…」と自覚し、「でもロマンスも起きないし、1年のうち誰とも喋らない日の方が多いなぁ」と、厳密には寅さんとはかけ離れている。だけど、寅さんに親近感があるので”逆寅次郎”として日々を過ごし、孤独な独身者でも人生を充実させる方法を模索しています。