フロイトの「転移」という概念を闇金ウシジマくんの例で解説
闇金ウシジマくん、俺の大好きな漫画だ。
自分に共感するキャラクターもいるし、自分の荒れた地元にいるようなDQNの姿に懐かしさを覚えることもある。
人生に失敗する人を見て教訓にできる一面もある、子どもに読ませるのもいい。
また、不幸な人達の群像劇で安堵するシャーデンフロイデを喚起するような要素もあるよな、この漫画は。
賭博黙示録カイジの利根川がいう「安全であることの愉悦」みたいな感じ。
この闇金ウシジマくんの10巻に、”板橋”というキャラクターが出てくる。
仕事で下手こいて平社員、仕事がなく、上司に嫌味を言われる日々。
そんな板橋、仕事もうまくいかず汚部屋で孤独に過ごす男は、精神的に荒んで、些細なことでイライラする。
コンビニで少し、前のお客さんがグズグズしているだけで、ひどい罵声を浴びせたりする。
この行動、精神分析家のフロイト的な解釈をするなら、これは”陰性転移”と言えるだろうよ。
フロイトは治療の過程において、患者が過去に自分にとって重要だった人物(多くは両親)に対して持った感情を、目の前の精神科医やカウンセラーに対して向けるようになるという現象を見出した。これを転移(または感情転移)と呼ぶらしい。
転移は、患者が持っている心理的問題と深い結びつきがあることが観察されたことから、その転移の出所を解釈することで、治療的に活用できると言われている。
患者がカウンセラーや精神科医に対して種々の感情(好意や愛情、怒りや不信感)を抱く転移によって生じた感情のうち、好意や愛情などのポジティブな感情を抱く状態を「陽性転移」。
憎悪・不信・過度な怒りなど、ネガティブな感情を抱く状態が「陰性転移」。
そしてこの転移の入力と出力は、必ずしも同じになったりはしない。
それはフロイトが言っていたかどうかは知らないけど、両親への好意的な感情が、カウンセラーにも向けられると言ってるんだから、そう解釈しても間違いではないはず。
この板橋の場合、会社で村八分にされ、窓際に追いやられた鬱積が、コンビニの客に陰性転移している。
長い時間を過ごす会社の人間は、自分にとって重要な人物であり、その人物から受けたストレスは他人に陰性転移する。
仕事で長い時間、ネガティブな感情を重要人物に抱き続けると、プライベートで付き合う人間や全く関係ない人間に対しても悪い影響を与える可能性があるし、非常に危険なことなんだよな。自己嫌悪になったり、攻撃的になったり、悪循環になる。
だから、自分がネガティブな感情をどれぐらいの時間、抱き続けているかを把握することは重要で、そのネガティブな感情が仕事という場面だけでなく、他のシチュエーションでも転移されていないか?を探ってみるといい。
コンビニのATMで長時間、待たされてイライラしているのは、本当は操作が遅い前の人にイライラしているのではないのかもしれない。
自分の納得のいかない日々のネガティブな感情が、少し待たされただけでストレスとなって、他人へと陰性転移されている可能性だってある。
仕事が充実して、楽しい日々を過ごしてるなら、些細なことでイライラとかしないだろうからな。
だからイライラした時、怒りを覚えた時、アンガーマネジメントとして「本当に目の前のことに怒っているのか?」「これは別のストレスが陰性転移されているのではないか?」と考えてみると、冷静に自分の日々を見つめ直すことができると思うから、やってみてくれや。