那智曼荼羅の世界を表現しようとした稗田一穂の作品
田辺市立美術館の稗田一穂展に行った話の続き。
■田辺市立美術館の稗田一穗展へ【2022年11月19日(土) ~2023年1月15日(日)】 | 逆寅次郎はタナトスを抑えられるか?
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この美術館は新庄総合公園の中にあるので、公園のベンチに腰かけた。
稗田一穂絵はがき4枚セットAと図録を購入。
どれも素晴らしい。
絵葉書だから、美術館で観た大きな絵ほどの没入感はないけど。
買った絵はがきと稗田一穂の図録を参考に。
どういう思いを込めて絵にしたのか、勉強。
●雲烟熊野灘
この絵について、直接的な解説は図録に見受けられなかった。
でもこの絵はすごい。「ありそうで、ない」感じ。
恐らく熊野灘に行って、この絵と同じ構図を探すのは無理だろう。
稗田一穂は「現実でない空間、そして現実より以上に真実な空間と感情が迫って来るような画面を表したい」(図録p140)と、語ったように。
この淡水と海水が混じる汽水域、現実と幻想がクロスオーバーする瞬間を描いたような熊野の光景、もう1度博物館で観たいな。
●天宇
53|pp.99
天宇 1989(平成元) 田辺市立美術館
天宇は天空、大空を示す漢語。空に繰り返される不変の天体の周期が月に象徴され、太古より地上に積み重ねられてきた人の営みが社殿によって表される。天上と地上に流れる悠久の時間が、画面でひとつに重なって静止している。永遠というものの形象化ともいえる作品である。本作の着想は那智で得たものであり、画面左下に描かれる一条の滝が、この社が熊野那智大社であることを示している。稗田は「表現したかったのは一種の那智曼荼羅の世界かもしれない」*という言葉を残している。(三)
稗田一穂「天宇」『紀伊民報』第14028号、1990年1月1日、9面。
(図録p174より引用)
「永遠というものの形象化」っていうテーマがすごい。那智曼荼羅、気になるな。民俗学ファンとして、また機会があったら研究しよう。
●神瀑・那智
この絵も雲烟熊野灘と同じく、現実的でもあり幻想的でもあるような光景。
●春巡る熊野
60|pp.106-107
春巡る熊野 1995(平成7) 田辺市立美術館
本作の中央下に描かれているのは、1889(明治22)年の大水害によって倒壊し流出したために、移転した熊野本宮大社 の旧社地、大斎原(おおゆのはら)である。不在の社と、それを取り囲む深い山々と川が、再生の象徴的な時季である春の訪れとともに描かれ、遥かな時の流れに想いが駆り立てられる。光を伴った山襞の重なりや、銀箔による川の輝きが、神々が宿る地としての熊野の表現に効果を上げている。
(図録p175より引用)
川の輝きを銀箔で表現するって…すごいな。
春って、再生の象徴的な季節だったんだ。
この絵を観て解説を読んだら大斎原、行ってみたくなったな。
田辺市立美術館の館内には、婚活情報もあった。
和歌山県外だから参加は難しい。