逆寅次郎はタナトスを抑えられるか?

「跳んで埼玉」は一級のファンタスティック・スペクタクル・コメディ

跳んで埼玉…これは、面白い!

 

 

まず驚いたのが、ヒエラルキーの具現化。

 

東京の赤坂・青山・丸の内等を頂点として、着ている服や住んでいる家、文明度を、段階的にみすぼらしくしていく感じがすごい…。

カリカチュアライズの仕方がきめ細かくて笑える。

田無、八王子や狛江が、中途半端にdisられてる感じも最高。

芸が細かい。

 

Zクラスの埼玉県民は煤(すす)みたいなので体が汚れてて、平屋のボロい家に住んでるっていう酷い有様。
何か縄文人みたいな服着てる埼玉県民もいたな(笑)

 

そんで月曜から夜更かし的な、笑える地域ネタ。

陽炎をユラユラ漂わせたり、田舎を象徴する田んぼアートを出して熊谷を描いたり、草加せんべいで踏み絵させたり、千葉の落花生と九十九里の地曳網漁を使って埼玉県民を奴隷にするみたいな…。

ご当地あるあるネタみたいなのを組み合わせ、笑える茶番劇を何個も仕上げ、断続的に展開させてくる。

だから、にやにやが止まらない…。

 

埼玉と千葉が対決するところのカードバトル、有名人の出身地対決。

ここは何か、ワクワクもした。

「古今東西」ってみんな、やったりするよな。

大喜利っていうか、自分の引き出しをどれだけ出せるかっていう。

その親近感のある日常の勝負を、すごいスケールにして見せてくれる感じ。
「YOSHIKIか~」「お~高見沢か~」って。
これがほんと、絶妙に拮抗していて、面白いんだよな。

桐谷美玲&真木よう子 VS ビーチボーイズ(反町隆史&竹野内豊)、小倉優子VS小島よしお…で、最後、あの人がオチ…ああ~いい!

「負けてもいいかな」って人が、出てくる。
小粋なセレクトで、感慨深い気分にさせてくれる。

ちょっと小休止、って感じの。

 

けど何で、この映画、こんな面白いんだ…この面白さは何か、子どもの時に観た映画「ジュマンジ」に似てて。

「次は何が起こるんだ!?」「何が出てくる!?」と、すごい子どもの時にワクワクしたんだけど。

その時のような感情を呼び覚ます勢いだった。

 

両方の共通点として何か、宝石箱をひっくり返したようなハチャメチャ感みたいなのが、楽しいんだよな。

 

ジュマンジを観て「何でいきなり象が出てくるの?」っていう驚きは、跳んで埼玉を観て「何でいきなりヌーが出てくるの?」っていう驚きと似てて。
そんなヌーが通り抜けるアフリカのサバンナみたいな映像の前には、SFチックな池袋が出てきてたりして。

そもそも、何で宝塚歌劇団みたいな恰好をしたGACKTと二階堂ふみが居て、健康ランドに来る大衆演劇の役者みたいな恰好した京本政樹が居て、グレイテストショーマン?みたいな伊勢谷友介の取り巻きは海女さんでほら貝もってるし、竹中直人は何かの戦艦の提督みたいだけど…そんなのが同じ世界観で共存してる?あり得ない!

のだけど、それをそう思わせない、茶番をシリアスに演じてリアリティを保たせる役者たちの演技も素晴らしい。

時代設定も舞台設定もバラバラで、統一感ないんだけど、でも…これを実は望んでいる!んだよな。

漫画「刃牙道」でも描かれてたけど、もし宮本武蔵が復活したら勝てるやつはいるのか?とか。
漫画「ジパング」で描かれてたけど、もし最新鋭のイージス艦が第二次世界大戦時にタイムスリップしたら日本はどうなってた?
漫画「ドリフターズ」で描かれてたけど、もし織田信長が生きて明智光秀と戦ったらどうなる?
小説「高い城の男」や「ユナイテッド・ステイツ・オブ・ジャパン」で描かれてたけど、第二次世界大戦で枢軸国が勝ってたら世界はどうなった?

みたいな。

例がちょっと偏ってるが、既存の歴史をなぞったり、詳らかにその時代を描く作品も、悪いとはいわないが。
色々な時代とか舞台とか世界観が混在している、宝石箱のような世界ってのは、予測不可能で底が知れない未知の部分がある。

だから面白いし惹かれるんだと思うのよ。

ディズニーランドだってUSJだってそうだろう。

ソロだから俺はほとんど行く機会がないけどよ。

 

全然、関係ない作品が同居してて、でも楽しくて。

ああ、この滅茶苦茶な感じ、楽しいな、テーマパークにいるみたい。
これを望んでいた…って感じよ。
ディズニーランドとかUSJに行く相手も機会も少ない自分にとっちゃあ、最後のエンディングの曲も面白かったな。

 

とにかく最高だった。

単純なコメディ映画に留まらないこの作品は。
歴史ファンタジーのような舞台設定や、アドベンチャー映画のようなワクワク感も兼ね備えた、ファンタスティック・スペクタクル・コメディって感じ。

ぜひ続編を作ってほしい!
2はまだ見通しがないみたいだが…山梨とかも、参戦希望。

ちなみに山梨出身の田我流のラップ&EVISBEATSのビート、は最高なのは言うまでもないが。

 

EVISBEATS – 夢の続き feat. 田我流

このPVに出てくる景色、たぶん山梨だと思うが…この美しさに…埼玉は、勝てるか!?

 

いや、たぶん2でも絶景の部分はフォーカスされず。

辺鄙なところとかをカリカチュアされて揶揄されるかw

期待して待ってる。

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管理人:逆寅次郎
東京在住のアラフォーのおっさん。大学卒業後、出版業界とIT業界で、頑張ってサラリーマンを15年続けるも、他律的業務と人間関係のストレスでドロップアウト。日銭を稼ぎながらFIREを夢見る怠惰な人間。家に帰っても家族もおらず独り、定職にも就かずにプラプラしてるので「寅さんみたいだな…」と自覚し、「でもロマンスも起きないし、1年のうち誰とも喋らない日の方が多いなぁ」と、厳密には寅さんとはかけ離れている。だけど、寅さんに親近感があるので”逆寅次郎”として日々を過ごし、孤独な独身者でも人生を充実させる方法を模索しています。